全国連盟に入る最近の事故報告の傾向として女性の事故比率が増加しているという報告が
なされました。
しかし、これらは男性リーダーやメンバーの気遣い不足や、女性メンバーのコミュニケーション
不足
(なかなか言い出しにくいものですが)が時として重大事故に繋がることがあります。

今回はK会副会長Aさんより、会のMLで発信された内容をご本人承諾のうえ一部訂正加筆
したものを掲載させていただきます。

男女それぞれの長所短所をお互い補いつつ登山は成功させることができます。
女性は言い出しにくいことではありますが、生命に関わることですので、必ずメンバーに
対するコミュニケーションを取っていただき、
男性は下記意見をよくお読みになり配慮していただくことを

切にお願い申し上げます。

女性メンバーの登山中における注意、留意事項

女性特有の状況への対処

(トイレにいくとき)

登山で女性が一番困るのはトイレです。
トイレがない場合、山ではトイレでない場所でも用を足すことになります。
慣れてくればサッと木陰に入ったりできるものの、なかなか難しいです。
しかし、トイレの我慢は体にも悪いし、行動ミスを引き起こすこともありえます。
恥ずかしがらずにトイレに行きたい旨を告げましょう。
トイレットペーパーはビニール袋に入れて持ち帰りましょう。
燃やすのはよくありません。火事を起こすことがあります。
何も遮るものがないときはツエルトを被るとよいようです。岩場などでは有効です。
また、事前に地図の確認と同時に、トイレの場所の有無を調べておくということも留意しておくと
良いと思います。

(冷え症の女性)

冷え症の女性はよくトイレにいきます。頻繁にいくのが面倒なだけならいいのですが、
嵐のときや冬の吹雪時など、トイレにいくことが危険な状況があります。
水分は必要ですが、下半身はなるべく冷やさないように心掛けなければなりません。
お尻があたたかいとそれほどトイレにいきたくならないので、ダウンズボンは夏でも履き、
寝袋に下半身だけ突っ込んでる方も多いです。
冬場はカイロやテルモスのお湯をほどほどに飲むことでとにかく体を温めます。

(生理)

登山中、一番困るのは生理です。宿泊の縦走時や沢登り、雪山など困る場面は多々あります。
生理中は山に行かないという選択肢もあるのですが、そもそも、環境が変わるので、
予想外に体調が急変して生理になってしまうこともよくあります。
生理周期は一定の人もいれば変化しやすい人もいます。
だいたいこの日くらいというのはありますが、健康な女性でもずれたりすることはよくあります。

生理期間になってしまうと、眠たくなったり、だるくて行動が緩慢になったりします。
また、生理前後は気分がすぐれないこともあります。
女性パーティーでリーダーをやると痛感しますが不調の訴えが多いです。
もし、山で女性の4人パーティーがいたとしたら、確実に1人は生理中と思ってもよいです。
しかも、なぜか山では「生理が移る」のでパーティーのほとんどが生理中ということもあります。

登山中はお風呂に入れないことや、装備を汚さないように気を付けたりしなければいけないことも
あってストレスもかかります。

生理用ナプキンよりタンポンのほうが下着などを汚しにくいと思います。
タンポンとナプキンを両方しておけば、トイレ休憩がなかなか取れなくても下着が汚れず安心です。
また、沢など水に入るときはナプキンは水を含んで下手すると下着のなかでプカプカ浮いてしまい
ますからタンポンのほうがよいと思います。

ちなみに、生理中の女性がいる縦走の場合、下記のことに注意します。

1.テント場でテントを張る場所は、トイレから近い場所に設定。
2.トイレ時間が増えるのでリーダーは行動時間に余裕を持たせる。
  よく、朝起きたらトイレに行く前に、「まず飲み物と食事の準備」、と言われるのですが、
  女性の場合は、男性よりトイレが近い場合が多く、朝起きるとすぐトイレに行きたい方も多いです。
  しかも、朝の行動開始時になると、たいてい女子トイレは行列です。
  天候などの問題がない限り、起きた時にすみやかにいったほうが混雑も少なくていいと思います。
3.歩くスピードは普段よりゆっくり。特に朝は生理中の女性は貧血気味!リーダーは調節しましょう。
4.体を冷やさないようにさせる。(雨の中の山行だと特に。テルモスが活躍する場面です)

男性と混合のパーティーで男性がリーダーだと言いにくいし、言っても男性にはよく分からないので
言わない人が多いのですが、言ったほうがよいと思います。
特に、リスクのあがるバリエーションや冬山になれば必ず申告すべきと思います。
ただでさえ、宿泊のときはテントで男女混合になる場合は多く、装備など汚さないかと生理中は
気を遣って緊張します。
どうしても申告が難しい場合は、女性が他にいた場合は知らせておいたほうがいいです。
男性も女性が「体調不良」「おなか痛い」と言ってる場合は、それとなく「生理中だろうな」と察して
もらえるとありがたいです。


⇒体調に関する率直なコミュニケーションはパーティーの行動リスクを減らすことに繋がります。

また、生理だけでなく、自分の持病はできる限り、申告しておいたほうがよいと思います。
特に、アレルギー症状があると共同食の時の食物など配慮が必要な場合もあります。



女性がもっていると登山のときに便利なもの

・生理用ナプキン
  生理中はもちろん、特に縦走中は、予期せぬ体調変化で突然生理になることも。
  万が一の場合は、北アルプスなど営業している山小屋ではまずナプキンは売ってます。
  (メニューにない場合でもたいてい売ってます。数個で200円など。)が、持っていたほうが
  よいです。
  止血帯にもなりますし、下着が汚れないのでお風呂に入れない縦走には重宝。


・ビニール袋&ジップ式のプラスチックバック
  いろいろ便利ですが、特に生理用品が捨てられない場合は、ビニール袋と密閉式のプラスチック
  バックがあると臭いがせず便利です。


・鎮痛剤
  生理痛対策に、救急セットに忍ばせておくと良いです。

・カイロ
  おなかの冷え防止に。おなかが冷たいままだと体調を崩します。お湯は必要ですが、
  ミニサイズの湯たんぽでもよいと思います。
  翌朝は冷めたお湯を再び温めたり、顔を洗うのに使っています。


・テルモス
  冬場はもちろん、夏場も縦走では活躍します。体の冷え防止に500mlを個人用に持っておくと
  良いです。

  パーティーのリーダーをするなら、パーティー用に800900mlを持っていると良いです。
  最近、THERMOSの山専ボトルが改良されてより使い勝手がよくなったのでお勧めです。


・ウエットティッシュ
  体がふけないのであると少しは不快さが解消します。
  微香料のものが気持ちも和らいでいいと思います。
  メーク落としだと、残った日焼け止めも落とせます。


・日焼け止め
  紫外線対策に。汗で落ちやすいので何度もこまめに塗りなおすことが大切です。
  顔の部分では、鼻や頬骨の部分が高く、より日光が当たりやすいので要注意です。


・基礎化粧品
  コンビニで売ってるお泊りセットの使い切りサイズやサンプルなど。
  あらかじめ、コットンに手持ちの化粧水や乳液を含ませてジッパーの袋に入れて持ってきても
  よいです。
  山に慣れていない人で、小瓶に入れている人を見かけますが、重量を考えましょう。
  乾燥と紫外線で肌はボロボロになるのであるなら、化粧水、乳液で、山行中も保湿したほうが
  肌へのダメージを抑えられます。
  下山後は、自宅で美白マスクを集中的に数日すれば、日焼けを早期に解消し、メラニンの沈着
  を抑えることができます。



また男性女性問わず一般的に40歳を越えると現れる更年期障害には要注意です。
特に女性は突然の眩暈(めまい)に襲われることがあり、それが切り立った痩せ尾根や
急斜面の通過時、リードクライミング中、沢登りの高巻き時に起こったりすると
どんなに慣れた方であろうと、他者や自身さえも予想外の重大事故を引き起こす
可能性があります。
三半規管内に障害物が入り起こることが多いようです。自身でもその物を取り除く就寝前の
対応策も紹介されていますので、兆候がある方は普段からコントロールされてください。
また同行メンバーにも生理現象と同じく伝えた方がよいでしょう。
行きたい気持ちも大切ですが、自身の体調およびメンタルコントロールを重視し
中止した方が、自分のためにも同行者のためにもよいと思います。

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